原因は、甲状腺の萎縮、下垂体の甲状腺刺激ホルモンや視床下部の甲状
腺刺激ホルモン放出因子の欠乏、甲状腺機能亢進証に対する過度の治療
などである。症状は、体重増加、無気力、浮腫、動作緩慢などがあり、重症
なものは粘膜水腫といい昏睡に陥ることもある。治療は甲状腺ホルモンの
投与であるが、一生続けなければならない。甲状腺ホルモンの生産が減少
した状態で、どの年齢層にも発症する(先天性のものにはクレチン症などが
ある)。甲状腺ホルモンは、全身のエネルギー利用を促すホルモンである。
エネルギー需要に応じて甲状腺から分泌されるが、これが不足することは全
身でエネルギーを利用できず、神経系、心臓、代謝など各器官の働きが低
下することにつながる。もっとも多いのが橋本病である。自己免疫によって
甲状腺が慢性炎症となった状態であり、原発性に分類される。発展途上国
ではヨード不足により甲状腺ホルモン自体が合成できないことが原因になる
こともある。このほか、手術や放射線治療により甲状腺を摘出したり廃絶させ
た場合に医源性の甲状腺機能低下症となる。